Information ethics

情報倫理について

Case1


ニフティ事件(東京地裁第一審判決 平成9年5月26日)

[概要]
国内最大手のパソコン通信、ニフティサーブに設置されている「現代思想フォーラム」に、ある会員が他の会員について書き込んだ複数の文書が名誉毀損に当たるとされた事件のこと。
原告は、フェミニズムの立場からフォーラムに参加し、女性の自立の必要や中絶の許容性などを主張。これに対し、被告は原告の意見に反発を感じ批判文を書き込んだが、その中に名誉を毀損する内容が存在するとして、原告らは不法行為を理由に東京地裁に提訴。原告は、加害者である発言者だけでなく、プロバイダーであるニフティやニフティから管理を依頼されていたシステム・オペレータに対しても、名誉毀損の共同責任を主張し、その法的責任を問うために損害賠償請求。東京地裁はシステム・オペレータに対し、他人の名誉を毀損する発言が書き込まれたことを知りながら必要な措置をとらなかった作為義務違反により、不作為による不法行為の成立を認めた。また、被告ニフティに対しては、システム・オペレータとの間に実質的な指揮監督関係があるとし、使用者責任と損害賠償を認めた。(民法第715条 使用者の責任、民法第719条 共同不法行為の責任)

[判例]
ニフティ事件は、プロバイダーやシステム・オペレータに対して法的責任を認めた判例である。
この判決を踏まえれば、名誉毀損表現を削除しないまま放置するプロバイダー等に対して法的責任を追及することが可能になる。したがって、被害者は、プロバイダー等の法的責任を指摘して掲載を止めるよう求めることも可能になる。

[解説・批評]
インターネット上の自由な空間では、匿名性も高く、誰もが自由に個人の思いを表現することができます。それゆえ、使い方を誤れば、他人を傷つける発言や犯罪を誘発しかねない発言も制限なくネット上を飛び交うことになります。しかしこの場合、発言者は名誉毀損に基づく損害賠償請求だけでなく、名誉毀損罪という刑事罰の対象にもなることがあります。基本的にネット上で個人の意見を表現することは自由ですが、法的責任問題につながる可能性もあることを常に念頭においておくべきだと思います。
この事件のように、ネット上の表現問題は多くあります。これらの被害を最小にとどめるためにも、すぐに掲載を止めさせることが必要です。まず、サイトの運営者であるプロバイダーや発言者にそれらの表現の削除要請をするべきですが、受け入れられないこともあります。プロバイダーは、発言者の表現の自由を害することなく、慎重に削除を検討しなければなりません。しかし、誹謗中傷などが掲載されるといった問題が生じたとき、直接発言したわけではありませんが、プロバイダーも責任逃れはできないと思います。よってこの判例により、誹謗中傷する表現を削除しないまま放置するプロバイダーに対して、掲載の削除を要求できるようになったことは、被害者にとって少しは安心できるのではないでしょうか。

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